次の日、与論蟬の馬鹿でかい泣き声で目がさめる。
朝6時には大合唱。
そして朝日が、太陽がジリジリと。
間違えた。
夕日が沈む方にテントを張ったつもりが、太陽が出てくる方に張ってしまった。
日陰に追いやられながらリリコイ、バナナ、コーヒー。
海にドボンして、さぁ出発。
すると、昨日の飲み会にいてた何人かが集まっていて、隣に座っていたモリさんが月桃を探しに連れいってくれると。
ありがたいなぁ。
軽トラに乗り込み車を少し走らせると、そこら中に月桃。
うぉ!こんなにもいたるところに自生してるんだ。
車を止めてもらい摘み取っているとモリさんが、それで何するんやと聞いてきたので、僕たちのブランド Tsuki の話をした。
へぇ、こんなもんが商品になるんかぁ、住んでるとわからんけど他所から見ると宝の島なんやなぁ。
早速抽出開始。
順調順調。
するとミナミさん(飲み会誘ってくれた兄貴的な人)が百合ヶ浜に行くんやったら今日がいいよ。
百合ヶ浜は満月の時に浮かび上がる浜で、その時によって形や大きさも違うらしい。
飲み会のメンバーの船グラスボートに乗って出航!
百合が浜到着。
すると、一通のメール。
今回の満月は山羊座の満月。
キーワードはパワーで、権力を恐れないパワー、反抗する方法ではなく交渉するエネルギーで、その源は分かち合い。
愛をみんなで分かち合う。そして、山羊座は交渉のために世界を駆け巡る。
ふむふむ、僕、山羊座なんだけど。
今回の旅の始まりに送られてきたメールといい、このメール。
送り主は二人ともpocapocaの大切な人。
確実に背中を後押ししてもらってる。
一体何が始まるんだろう。
島へ戻り、原付で島探検。
目的を全く作らなければ、右に行こうが左に行こうが全てオッケーになる。
あー、気持ちいい。
こんな風に生きていきたいなぁ、なんてことを感じながら一軒のお店に入った。
そこで見つけた一冊の本。
「与論島薬草一覧」
監修 山悦子
なんとこの本、与論島に自生している薬草の場所を地図に印している。
そして、効能。
その数約140種。
40年の研究をまとめたと書いてある。
会いに行こう。
これから月酔祭だから明日だな。
その前に、お腹が空いた。
お寿司屋さん。
キャッチフレーズが島一番美味しくないお店。
店内に入ると、とても柔らかいお父さんとお母さん。
話を聞いてみると、息子がウケ狙いでつけたらしい。
全然笑えないけど、跡取りの息子。
まだ継いでいないけど、そういうタイミングが来る感じ。
テントを張ってるところでも船の組合の人たちがバトンの受け渡しをしていた。
なんか、こういうタイミングが今きてるのかなぁ。
さぁ、待ってました月酔祭!
この祭りはアーティスト神田さおりが細部まで作り込んだスーパーエキサイティングエンターテイメントアートだ。
来年も再来年も続くのであれば、世界中から人が押し寄せて来ることになる。
祭りが終わり、大ちゃんと二人でビーチへ向かった。
満月に照らされた海があまりにも綺麗で、服を脱ぎ捨て飛び込んだ。
気持ちいい!
すっぽんぽんで海の中から見上げる満月。
遠くの方から人影が。
女の子二人。
こっちは裸のおっさんが二人。
海から出ていくタイミングがわからない。
体が冷えて来た。
暗闇の中やし何も見えないよねと言い聞かせて海から上がったら、月が明るすぎておかしな二人の出来上がり。
ケタケタ笑いながら、バイクに乗って満月の百合ヶ浜へ向かった。
与論島の地形と夜がこんなにも宇宙を感じさせてくれる。
呼吸を整えると溶け込んでいく。
とぷん。
月桃の仕上げをした。
太陽が昇って来るのと同時にすごい光景が目の前に。
左から雲。
右から雲。
中央で重なり形を変えていく。
海の沖の方じゃなく、砂浜と海の境目の超至近距離。
まるで映画館で観客になってスクリーンの一番前にいる感じ。
形が出来上がるとそれは螺旋を描きながらゆっくりと沖の方へ進み出した。
まるで何かの行進。
まるで何かの通り道。
僕たち二人は声を失い、いつのまにか眠っていた。
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