あまりの暑さに目がさめた。
与論島に着いて3日目の僕の体は笑えるくらい日に焼けている。
島の人はこの姿を見ると口を揃えて、アロエぬっときなさい。
この島は薬草の宝庫やから、適当に摘んだらええわと。
歯を磨きに洗い場の方へ行くと、いつものメンバー。
いつもの風景。
僕もこの船の組合の一員になったかのように、みんなが包んでくれる。
月桃はどうなった?
何を作るんや?
みんな月桃好きなんか?
何やらみんなの中に風が吹いたっぽい。
どんな形になるかはわからないけど、いつか一緒に何かやりたいなぁ。
山悦子さんのことを聞いてみた。
みんな知ってる。
そらぁ山さんに会うのがええわ、あの人はなんでも教えてくれるわ。
途中、道に迷いながらも島人に案内してもらいたどり着けた。
庭の入り口にカミメボウキ(トゥルシー)。
たくさんの植物に囲まれた緑いっぱいの家。
すみませーん、こんにちわー。
すると一人の女性が。
山悦子さんだ。
ここに来た経緯を話すと、家に入りなさいと勧められた。
え?いいんですか、こんな見ず知らずのおっさん二人を。
中へ入るとたくさんの薬草の資料が。
すると、悦子さんが瓶に何かが付け込まれた何かを持って来てくれて、湯呑みに注いでくれた。
十何年か前に仕込んだ薬膳酒らしい。
ヨロンケンポウで鍛えられた僕は一気に飲み干した。
そして大ちゃんも。
どうやらそんなふうに飲むものじゃないらしい。
いくつか会話を交わし悦子さんの話を聞いていたら、昨日あまり寝ていないのと、さっき飲んだ薬膳酒のおかげでまぶたがとてつもなく重くなって来た。
あかんあかん、話を聞きたいと伺っておいてその話を聞いてる時に居眠りなんて。
しかも目の前で。
一瞬意識が飛んだ。
あかん!
ハッとして大ちゃんの方を振り向くと、びっくりするくらいの角度で首を垂れ下げて、目を蓋していた。
やばい、この二人。
悦子さん、ごめんなさい。
意識を立て直して再び話を聞くと、なんと毎日誰かが話を聞きたいと沖縄や本州から人が訪ねて来たり、
どこかの大学の研究者が一緒に何かをする話をしに来たりだとか。
悦子さんがとても重要な人っていうのがわかった。
僕が月桃と相性のいい植物とかを聞いたり自身のブランドTsukiの話をしていると、突然悦子さんが。
あなた、会ったことあるわね。
え?
僕は与論島に来たこともなければ、ましてや悦子さんのことを知ったのも2日前とかだ。
悦子さんは続ける。
昔一緒に研究して何かを作ってたわね。
すると大ちゃんが間髪入れず、「いや、ないっす。」
もう少しその辺の話を聞いていたかったような。
すると、なんと僕の口からアレヨアレヨと言葉が溢れて来た。
内容はこうだ。
与論島に住んでいる人たちも幸せになるTsukiを一緒に作りませんか?
穏やかに話を聞いてくれていた悦子さんが、これから工場に行くから一緒に来ない?
どうやら悦子さんの研究してきたことや思いを引き継いでいる人たちがいて、薬草研究家グループみたいな感じで活動や仕事をしているらしい。
そしてその活動の場となっている工場に今から連れて行ってくれると。
出発する前に悦子さんの写真をパシャリ。
可愛らしい、素敵な女性。
親しみを込めてえっちゃんと呼ばしてもらおう。
工場に着くと何人かの女の人。
すると、あなたいい時に来たわね。
またこのフレーズだ。
今日は薬草を研究している主要人物が全員集まる日らしい。
早速Tsukiと与論島のこれからのワクワクを話した。
僕たちがTsukiをどういう風に作っているかを説明すると、
「与論島にぴったりじゃないの!」
そして月桃がバッチリらしい。
ぜひ一緒にやりましょう。
まじ?
まさかこんな話になるとは、旅が始まる前には全く想像していなかった。
するとえっちゃんが、満月の日にTsukiを作るのなら、この日に来なさい。
なんとこの島には満月の日に行われる祭りがあるんだそう。
この日にしなさい。
そして、家族もみんな連れて来なさい。
毎年与論島へ行くことが決まった。
そうだ、一つ聞きたいことがある。
なんでこの島は神の島と呼ばれているの?
ついて来なさい。
着いた場所は小高くなっている丘の上。
昔々この島がまだ海に浸かっていた頃二人の神様が漁をしている時に錨の先が引っかかり、引っ張り上げられたのがこの島なんだそう。そして他にも説明してくれていたけど、だいたい忘れてしまって、ただ一つ、気になるフレーズ。
龍の通り道。
するとえっちゃんが、この石を触りなさいと丘の上にあった岩を指差した。
なんの岩か忘れてしまった。
起こった出来事は、早めに書き綴っておかないとスルスル抜けていく。
今度来た時にもう一度聞いてみよう。
大ちゃんと別れてテントへ戻ったら、知らないテントが二つ増えていた。
沖縄から来たおじさん二人。
一緒に飲みましょうということになり、おじさんの不倫話をひたすら聞かされながら、
明日は最終日、氏神さまに挨拶しに行こうと思い眠りについた。
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